クロスケのブログ

この人の彼女って苦労しそう

2008-05

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スティーヴン・キング『トム・ゴードンに恋した少女』

◆キング好きだぜ!

モダン・ホラーの帝王と呼ばれた(らしい)
スティーヴン・キング
やたらと映画化された作品の多いひとなので
日本では、小説よりも映画のほうで
より親しまれてるんではなかろうか

『ショーシャンクの空に』(原題『刑務所のリタ・ヘイワース』)は
いままで見た映画の中でも五本の指に入るほど好きです

映画化されまくるのも納得で
キングの文章は、ほんとに映画向きだと思う
緻密なのにスピーディーな筆致にひきこまれて
まさに映画を見てるような気分になります
語りがほんとにうまいぞ


◆日本では最近文庫化された『トム・ゴードンに恋した少女』は
広大な国立公園の森に迷い込んだ、九歳の少女のサバイバルを描くお話
トム・ゴードンとは、作中で主人公が心酔している野球選手のこと

獣や虫や蛇や毒や菌の蔓延する森の中での生存闘争に挑むのが
たった九歳の少女という、サディスティックなほどに壮絶な設定
新潮文庫の表紙の、野田あいのとても可愛いカバーイラストとは裏腹に
苦悶と絶望感に満ち満ちた内容です

『死のロングウォーク』やら『ゴールデン・ボーイ』に見られるように
極限状態に置かれた人間の、追い詰められていく精神状態を描くのは
スティーヴン・キングの十八番なのだけど
九歳の少女に対しても、その筆致はまるで容赦がない
ひどい。

ひとり孤独に森をさまよう主人公トリシア
周知のように、森というのはおそろしいところで
怪我、飢餓、病気、人の身のあらゆる苦痛が彼女を襲う
作者はそれでも満足できないらしく
キング作品ではお約束の「人知を超えた正体不明の怪物」までが
トリシアをつけねらい、苦痛のラインナップに恐怖を追加する
そこまでせんでも

これほどの絶望的状況にあって
主人公の聡明さと、どこか能天気な明るさが
彼女自身にとっても読者にとっても救いになってて
なんとかついていけた感があります
そうでなければ、ただの嗜虐趣味のホラー小説になってたと思う
読むのがつらすぎる

動物や幼児ものには、ホント弱いぜ
けっこう単純な涙腺してるおれだ

なにしろ作者が作者なので、最後まで結末は読めなかった
章ごとのタイトルとして
「試合開始前」「一回」「七回表」といった、野球のイニングで冠する
遊び心がかえって残酷で、不安にさせられる


◆このブログの方針として、ネタバレは避けますが
やたらと泣けた、と言っておきます
実に泣ける小説でありました

主人公トリシアが、空想の中でトム・ゴードンと語り合うシーンが
作中で頻繁に出てくるのだが
そこまで追い詰められる描写が悲惨すぎて、そのたびに涙がでてくる

そういえば、トム・ハンクス主演の『キャスト・アウェイ』を見たときも
バレーボールを人に見立てて語らうシーンで
おれは涙したものだった
終盤の「ウィルソーン!」にはほんとに泣いた

シンプルなつくりではあるけど
『トム・ゴードンに恋した少女』は
おれにとって、キングの傑作のひとつに数えられました
これ、映画でぜひ見てみたいとも思ったけど
見るのがすげえつらそうだなあ
途中で席を立つ観客が続出しそうだ
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